専門治療(アルコール外来)

専門治療アルコール外来

減酒支援外来

あなたのお酒の飲み方は大丈夫ですか?

現在のお酒の飲み方を続けると、将来お酒のためにあなたの健康や社会生活に影響がでる恐れはないでしょうか。お酒は、現在治療中の病気の回復の妨げになるばかりか、病状を悪化させる危険性があります。
もしもあなたがお酒の量を減らす、あるいは止めることに関心をお持ちでしたら、当院へご相談ください。国立肥前精神医療センター監修のワークブックを用いて、減酒支援を行っています。
減酒支援外来は、断酒を強制するものではありません。現在のお酒の飲み方が適正か、客観的に評価を受けることができます。このまま飲み続けても良いのか、減らした方が良いのか、あるいは止めた方が良いのか。あなたの進むべき方向を自分自身で選ぶことができるように、私たちがお手伝いを致します。
そのうえで、もし、お酒を減らしてみたい……とお考えであれば、お酒の飲み方をどのように変えるのか、お酒の量を減らすコツをお伝えしながら、あなたがその目標に向かわれるあいだ、しばし伴走致します。

お酒の量を減らして変わる自分自身を想像してみてください。

  • よく眠れるようになるかもしれません。
  • 憂うつな気分が減って、気分がよくなるかもしれません。
  • 体が今よりも楽になり、体力がつくかもしれません。
  • 能率が上がり、仕事が充実するかもしれません。
  • 家庭や職場などでの人間関係が良くなるかもしれません。
  • 体重と血圧が下がり、メタボの危険が減るかもしれません。
  • 心臓病や癌、肝臓病で命を落とす危険性が減るかもしれません。
  • 脳にダメージを与えることなく、健やかな老後をむかえることができるようになるかもしれません。
  • お金がたまり、生きている間にできることが増えるかもしれません。
  • しらふで過ごす時間は、あなたが思っているよりも、悪くないかもしれません。

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受診の流れ

  • 1まずはお電話で当院地域医療連携課までお問い合わせください。
    その際、以下の項目を中心に、相談員がはじめにお話をうかがいます。
  • 外来受診、入院治療のどちらをご希望か
    (外来通院をご希望の場合、今後は定期的に水曜日午前中の再来受診となります。)
  • ふだんの飲酒状況
    (例:晩酌に7%酎ハイ500ml3缶、週末はプラスで焼酎3合など)
  • AUDIT(飲酒問題スクリーニングテスト)の結果
  • 今回受診相談に至ったきっかけ
  • あなたにとって、飲酒することによる問題の内容
  • 喫煙状況
  • 同居の方の飲酒状況

お困りの状況を一緒に整理したうえで、受診予約の日程などを計画致します。

  • 2以下の資料が必要になる場合がございます。
  • 現在あるいは過去に受診されていた医療機関の診療情報提供書
  • 健康診断の結果票
  • 頭部MRIの画像所見
  • 3初診
  • 原則火曜日の午前中です。(応相談)
  • AUDIT(飲酒問題スクリーニングテスト)
  • 問診表記載
  • 診察(お酒の飲み方について評価し、今後の治療方針を決めます。)
  • 採血検査などの諸検査を行う場合があります。
  • 受付からお会計まで2~3時間程度必要となります。
  • 4減酒支援外来
  • 水曜日午前中の再来受診枠で、予約制です。
  • 健康日記に記録して実際の飲酒状況をモニタリングしてみましょう。
  • ワークブックを用いて減酒にチャレンジしていきます。
  • 受診の際に目標への到達度を評価し、随時目標を再設定します。
  • 3か月ほどの介入が基本ですが、必要に応じて延長も可能です。
  • 効果が芳しくない場合は改めて断酒をおすすめする場合もあります。
  • 薬物療法
  • 飲酒量低減薬セリンクロの服用は減酒に役立ちます。
  • 飲酒する1~2時間前に内服しておくと、脳に直接作用して飲酒欲求をさげ、飲酒の総量、頻度が減っていくというお薬です。
  • 実際の減酒の状況を確認、評価しながら処方を検討します。

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それでもうまくいかないときは…

もし、あなたのお酒の量があなたの健康や社会生活を害するほどに多く、継続してお酒の量を減らすことができない場合には、アルコール依存症の可能性があります。
この場合には、断酒が求められます。アルコール依存症は回復可能な「病気」です。

アルコール依存症からの回復

はじめ、お酒はあなたを助けてくれました。
飲酒すると、仲間とのコミュニケーションがうまくいきました。仕事や人間関係のストレスを発散させてくれました。なんとなく不安な睡眠薬をもらわなくても、寝酒で寝つきがよくなりました。やるせない寂しさや退屈さをなだめてくれました。飲酒すると、また翌日からいつもの日常を頑張ることができたのです。だから、飲み続けてきました。

そうするとだんだんお酒に強くなってきて、よりアルコール度数の高いお酒、よりたくさんの量が、酔うために必要になりました。肝臓の数値が高いのも、血圧が高いのも、なんとなく気になります。でも、周りを見渡すと自分と同じような飲酒の仕方の人をすぐ思い浮かべることができます。まだ大丈夫、そういいきかせて飲み続けました。

アルコール依存症からの回復

泥酔するといつもはできることが出来なくなります。夫婦喧嘩が増えました。仕事で注意されることが増えました。いつつくったかわからない青あざがあります。
飲みすぎたのでしょうか、スマホや財布、時には記憶を失くすようになりました。寝汗をかいたり、妙にイライラしたり、お酒を飲まないと寝付けなくなったり、なんだかお酒が手放せなくなってきたけど、やめようと思えばいつでもやめられる。そう自分にいいきかせて、飲み続けました。
「ほどほどに飲めばいい。飲みすぎがダメなんだ」と周りに言われて自分でもそう思い、飲む量を減らそう、休肝日をつくろう、と何度もやってみようとしました。でも、続きません。「明日こそ、今度こそ」そう思いながら、飲み始めるとやはり止まらないのです。結局、飲んでしまうのです。
「ああ、またできなかった。だから自分はダメなんだ」ますます惨めな気持ちになって、その苦しさをやわらげたくて、また飲みました。そんな自分を家族にみせることはできません。飲んでいないと嘘をつきました。家族を心配させたくなかったのです。
食事もとれなくなってきました。からだ全体が重たくて動かすのがおっくうです。おなかが毎日ゆるいけれど、水分だからお酒を飲んでおこう、食事はのどを通らないがアルコールなら入っていく。気が滅入り、何もやる気がおきません。家族や職場の人に怒られ、責められ、なじられますが、もう放っておいてほしいのです。ひとりで黙ってひたすら飲み続けたいのです。お酒を飲まないと、毎日を過ごせないのです。飲んでいてもつらいけれど、飲まないと尚、つらいのです。もうどうしていいかわかりません……。

アルコール依存症からの回復

アルコールは脳へ作用する薬物です。だんだんその効き目が悪くなり、よりたくさんの量が必要になります。しかしあなたは人間です。薬物摂取の物理的限界があります。
最初は手軽でコスパの良い“嗜好品”という名の薬物であったはずが、いつのまにか、副作用の方が大きくなってきていませんか。あなたの身体や脳は悲鳴をあげていたのに、その声に耳を塞いできませんでしたか。アルコールを上手に利用して、よりよい日常生活を送ろうとしていたはずが、いつのまにかそのアルコールに振り回されていませんか。
アルコール依存症は身近な病気です。飲酒する機会があれば100人に1人は発症するといわれている、慢性かつ進行性、致死性の、治療が必要な病気なのです。
再び上手に飲めるようになることは期待できませんが、飲酒を続けてきたことによって生じてきた様々な問題は、断酒を続けることで、回復させていくことができます。
あなたに必要なのは「酒に飲まれないように」という気合や根性ではありません。
共に歩む仲間、己に向き合う正直さ、そしてお酒を手放す勇気です。

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入院治療

アルコール依存症の本質はコントロール障害です。ほどほどに飲むことができるのであれば、とっくにできていたはずです。1滴も飲まずにしらふを保つことが、回復への大きな一歩です。入院中はお酒から物理的に解放されます。アルコールが足りなくなってきて起こる離脱症状に対して、点滴や安定剤への置き換えで、概ね安全に体と脳からアルコールを抜くことが出来ます。傷んだ身体や脳をいたわりながら、同じ苦しみをわかちあえる仲間たちと一緒に、どのようにアルコールを手放していくのかをしらふになって学びましょう。
医師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士、栄養士、薬剤師、心理士など多職種のアルコール治療チームがあなたをお待ちしています。

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ARP時間割表

午前 OT活動 OT活動 OT活動 OT活動 OT活動
午後 NOMAN予習 運動クラブ アルコール勉強会 OT活動 NOMAN OT活動 断酒会

※機種により表をスクロールすることができます

  • NOMANの会

ワークブックを用いて、入院中の当事者の皆さんと、看護師、作業療法士、心理士、ソーシャルワーカー、医師等の集団で認知行動療法を中心としたミーティングを行います。「飲まん」で生きていく方法をみんなで一緒に考えていきましょう。

  • NOMAN予習

木曜日に行うセッションについて、時間をみつけてご自身でワークブックに取り組んでいただきますが、ARPメンバーの皆さんと病棟看護師で“予習”として一度読み合わせを行い、わかりづらかったところなどを確認します。

  • アルコール勉強会

医師、看護師、作業療法士、ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士などがそれぞれの専門性をいかして皆さんに役立つ知識をお伝えします。
また、アルコール依存症がどのような病気なのかをわかりやすく解説したDVD教材の視聴の回もあります。

  • 運動クラブ

閉鎖病棟での入院生活の閉塞感や、運動不足を少しでも解消しましょう。体調の回復をみて参加時期を検討します。

  • OT活動

飲酒にかわる時間の過ごし方のヒントをみつけましょう。工芸、脳トレ、クッキング、体操など作業療法士が皆さんと一緒に楽しみます。

  • 断酒会

南区断酒会が第1土曜日の14時から当院敷地内デイケアセンターで断酒会を開催しています。入院中の方もスタッフと一緒に参加し、自助グループの体験を行うことができます。

★南区断酒会;福岡県断酒連合会南福岡断酒友の会

第1土曜日 14時~16時くらいまで 当院デイケアセンター

第2・4・5土曜日 19時~21時くらいまで 福岡市南市民センター

断酒会はこちら

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外来治療

3か月の入院治療を終了しました。断酒を始めて、食欲が出てご飯が美味しく食べられるようになりました。歩行もずいぶん安定しました。飲酒しなくても眠れるようになりました。しらふで過ごすのも、案外悪くありませんでした。
しかし病院の外の世界には、誘惑と危険がいっぱいです。その不安への対処法を一緒に考えましょう。抗酒剤や嫌酒薬はあなたを守ってくれます。実際に自宅で生活してみると、飲酒欲求が再びわきおこることはよくあることです。あなただけではありません。まだまだ、断酒し始めたばかりなのです。少し自信がもてるまで、約1年といわれています。

退院後まずは3か月を目標に、実践練習をしていきましょう。スリップ〈再飲酒〉しないにこしたことはありませんが、もしもしてしまっても、今までとは違います。
どうぞ外来でそのお話をきかせてください。再飲酒即再発ではありません。
あなたはもう、ひとりではないのです。

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AUDIT検査

AUDIT (The Alcohol Use Disorders Identification Test)WHO(世界保健機構)を中心に開発、作成された自記式のスクリーニングテストです。
現在の飲酒習慣が適切か、健康への被害や日常生活への影響が出るほど問題があるのか、AUDITというスクリーニングテストでチエックしてみましょう!

AUDIT検査はこちら

アルコール関連問題を抱えるご家族の方へ

あなたは自分なりに、じゅうぶん頑張ってきました。
そのときはそれが一番いい方法だと思ったのです。
「そんなにお酒が好きなら、何もやめろとは言わない。ほどほどなら飲んでもいいよ」と本人に寄り添い、気持ちをわかろうと努めました。大事な仕事や信用を失ってはいけないと、本人のかわりに職場へ休みの連絡を入れました。「飲酒運転だけはやめてほしい」と車の鍵をしっかりと隠しました。「あればあるだけ飲んでしまう」と家にあるお酒を隠しました。
「せめてご近所迷惑は避けなければ」と大声を出されないように、お酒を買ってきました。
「次にトラブルが起こったら離婚する」「もう出ていく」涙を流して本人にやるせなさをぶつけました。「今度こそ約束を守ってね」そう信じた矢先に、また、飲酒していた証拠をみつけてしまったのです。「嘘つき!」本人を責めると、むしろ暴言を浴びせられました。「こんな人ではなかったのに……」「お酒さえ飲まなければ……」「このままではまずい」と病院受診をすすめますが、本人は頑なに拒否し、あなたの心配をわかってくれません。

アルコール依存症からの回復

あなたの頭の中は、いつのまにか本人のアルコール関連問題でいっぱいになっていませんか。仕事をしていても、家でお風呂に入っていても、“この間にも本人が飲んでいるのではないか”と常に緊張していませんか。
あなたのだいじな人生が、本人によって振り回されてはいませんか。
本人がアルコール依存症という病気だとしたら、お酒を上手にコントロールすることは、もはやできません。本人がどんなに真面目で、どんなに家族への愛情があっても、です。
それと同じで、あなたも本人をコントロールすることはできません。
でも、あなた自身をコントロールすることには、チャレンジする価値があります。

まずは、あなた自身が自分の人生を自分の手にとりもどすこと。そしてアルコール関連問題を、本人にちゃんと返してあげましょう。それにはちょっとしたコツがあります。
あなたの行動が変わると、もしかしたら。
本人がようやく自身のアルコール関連問題に気が付くことができるかもしれません。

溺れている人を助けたいとき、要救助者の元へ飛び込んでしまいたい気持ちはわかりますが、一緒に沈んでしまっては、元も子もありません。救助者自身が健康であること、安全な場にいること、救助の方法を理解し、その道具を持っていることが必要です。
そして何より大切なのは、「救助者ができるだけたくさんいること」ではないでしょうか。

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家族相談の流れ

  • まずはお電話で当院地域連携課までお問い合わせください。
    相談員がはじめにお話をうかがいます。
  • ご本人の関心がなかなか治療に向かない場合、ご家族からまずは心身の健康を取り戻しましょう。
    ご家族自身の診療録を作成し、ご家族のお困りごとや、ご本人への関わり方などを一緒に考えてまいります。
     

  • ご本人の受診や入院のご相談は、【受診の流れ】に沿ってお話ください。

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高齢者のアルコール関連問題

あなたの身近な高齢者の方の、お酒の飲み方は大丈夫ですか。

高齢者への飲酒のダメージは、若い方の2倍にもなるといわれています。高齢者のお酒の適量はビール250mlや日本酒0.5合くらいです。
ご本人は、お酒の飲みすぎで認知機能が低下しているのでしょうか。認知機能が低下しているから、お酒を飲みすぎるのでしょうか。認知症のようにみえる症状は、アルコールの血中濃度がさがってくることでの離脱症状でしょうか。認知症やアルコールの影響での意識障害によるものでしょうか。
いろいろな可能性がありますが、まずは断酒環境下での評価が必要です。

上記のご心配があり、ご本人が治療を希望される場合、あるいはご本人にすでに同意能力がなく、ご家族が治療を希望される場合、入院治療の適応となる場合があります。

まずはお電話で当院地域連携課までお問い合わせください。
何かお力になれることがあるかもしれません。

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Q&A

アルコール問題が回復していくことは可能です。

自分を支え、家族を安心させるお守りとして、本人が抗酒剤を頼るとき、最大の力を発揮します。
飲酒欲求を下げる薬剤は別にありますが、万能薬ではありません。

本質はコントロール障害です。健康問題、社会問題、家庭問題が生じても飲酒を続けてしまう病気ですが、3つ揃うとは限りません。
しかしこのページをご覧いただいているということは、飲酒による問題が何か生じているのではありませんか。

閉鎖環境の保護性で「絶対に飲めないと思うと飲酒欲求はむしろ下がる」と言われる方も多いです。安全な環境で、安心してしらふを保ち、まずは断酒をスタートさせてみましょう。